ポイント解説
ヨーロッパにおける「17世紀の危機」をもたらした要因の1つが、三十年戦争でした。三十年戦争は最後にして最大の宗教戦争であり、西欧最初の国際戦争でもありました。講和条約のウェストファリア条約は、現代につながる主権国家体制を確立させた画期的な意義をもちました。
1.「17世紀の危機」
・1620年頃からの約1世紀間
・ヨーロッパの人口・経済が停滞
①社会不安
・疫病(ペスト)の流行
・魔女狩りの増加
②経済活動の停滞
・アメリカ大陸からの銀の減少
③戦争・内乱
・三十年戦争:1618~48年
・フロンドの乱:フランス、1648~53年
・イギリス革命:1640~60年
2.三十年戦争
①きっかけ
・1618年、ベーメン(ボヘミア)反乱
…ハプスブルク家に旧教を強制されたベーメンの新教徒が反発し反乱
→ドイツを戦場とする国際的宗教戦争へ
②対立構図:旧教VS新教
ⅰ.旧教側(皇帝軍)
・ハプスブルク家(神聖ローマ皇帝)
※傭兵隊長ヴァレンシュタインの活躍
・スペイン
ⅱ.新教側(反皇帝軍)
・デンマーク(新教国)
・スウェーデン(新教国)
・フランス(旧教国)
※別の対立構図:ハプスブルク家VSフランス
③終結
1648年、ウェストファリア条約
※大半のヨーロッパ諸国が参加
・勝者:フランス、スウェーデン
・敗者:ハプスブルク家(神聖ローマ皇帝)
ⅰ.宗教
・1555年のアウクスブルクの和議を再確認
・新たにカルヴァン派を公認
※従来のカトリック、ルター派に追加
ⅱ.領土の割譲
・フランスがアルザス(ライン川西岸)を獲得
・スウェーデンが西ポンメルン(北ドイツ)を獲得
→スウェーデンは「バルト帝国」に
ⅲ.独立の承認
・スイスとオランダの独立を正式に承認
※ハプスブルク家からの独立
・神聖ローマ帝国内の領邦(各諸侯の支配地)にほぼ完全な主権を認める
→神聖ローマ帝国の有名無実化
※約300の主権国家(領邦国家)に分裂
ⅳ.意義
・ヨーロッパ主権国家体制の確立
→主権国家同士の関係で国際社会が成り立つ時代へ
※皇帝によるキリスト教世界の支配は完全かつ最終的に終了