I.大正政変
※大正時代:1912~26年(大正15年まで)
1.第2次西園寺公望内閣:1911.8~12.12
①2個師団増設問題
・1912年、陸軍の2個師団増設要求を閣議で却下
⇒上原勇作陸相が単独で辞表を大正天皇に提出
・陸軍は軍部大臣現役武官制を利用して、後継の陸相推薦を拒否
⇒内閣総辞職
※帝国国防方針:1907年制定。国防政策の基本方針
・陸軍:17個師団から25個師団への増強をめざす
・海軍:八・八艦隊(戦艦8隻、装甲巡洋艦8隻)の建造をめざす
2.第3次桂太郎内閣:1912.12~13.2
・内大臣・侍従長を就任直後に辞職し、首相に就任
⇒第一次護憲運動が起こる
3.大正政変
①概要
・第一次護憲運動によって第3次桂太郎内閣が退陣に追い込まれたできごと
・背景:国民の政治意識の高揚
②運動の中心
・立憲国民党の犬養毅
・立憲政友会の尾崎行雄(「憲政の神様」とよばれる)
※共和演説事件のときの文部大臣(第1次大隈重信内閣)
③運動の展開
・宮中・府中の別を乱すとして桂内閣を批判、退陣要求
・「閥族打破・憲政擁護」をかかげ、運動が全国化
④桂太郎の対抗
・新政党の結成(のちの立憲同志会)、総裁は加藤高明
⇒議会・世論の反発激化、桂内閣は53日で退陣
4.第1次山本権兵衛内閣:1913.2~14.4
※与党:立憲政友会
・薩摩出身の海軍大将
①文官任用令改正
・政党員も高級官僚になれることにした
②軍部大臣現役武官制改正
・陸軍・海軍大臣の資格を変更
・現役の軍人に限らず、予備役・後備役の大将・中将まで拡大
※ただし、実際の選任例なし
③シーメンス事件(ジーメンス事件)
・海軍高官の汚職事件
⇒内閣総辞職
5.第2次大隈重信内閣:1914.4~16.10
※与党:立憲同志会(少数与党)
①首相就任
・国民からの人気、元老の推薦と陸軍の支持
②選挙で勝利
・立憲同志会が立憲政友会に圧勝
・2個師団増設案が可決
③外交
・1914年、第一次世界大戦の開始
・1915年、中国の袁世凱政府に対し二十一カ条の要求を出す
II.第一次世界大戦、日本の中国進出
1.第一次世界大戦
①ヨーロッパの情勢(20世紀初め)
ⅰ.三国同盟
・ドイツ、イタリア、オーストリア
ⅱ.三国協商
・イギリス、フランス、ロシア
※バルカン半島
・政情不安定で「ヨーロッパの火薬庫」とよばれた
②開戦
ⅰ.サライェヴォ事件:1914年
・セルビア人青年がオーストリアの皇太子夫妻を殺害
⇒両国間で開戦
ⅱ.世界大戦へ
・各国が参戦して戦争がヨーロッパに拡大
・総力戦…政治・経済・国民など国力のすべてを動員して行われる戦争
③大戦の経過
ⅰ.イタリアの動き
・1915年、三国同盟を離脱
⇒連合国側で参戦
ⅱ.アメリカの参戦
・ドイツが無制限潜水艦作戦を開始
⇒1917年、アメリカが連合国側で参戦
ⅲ.終戦
・1918年、ドイツで革命、帝政崩壊
⇒休戦の申し入れ
※第一次世界大戦の二大陣営
・同盟国:ドイツ、オーストリア、オスマン帝国など
・連合国:イギリス、フランス、ロシア、イタリア、アメリカ、日本、中国、セルビアなど
2.日本の参戦
①政府
・首相:大隈重信(第2次)
・外相:加藤高明
②参戦の根拠
・日英同盟を結んでいたため
⇒連合国側で参戦
③対ドイツ
・中国におけるドイツの根拠地青島と、山東省のドイツ権益を接収
・赤道以北のドイツ領南洋諸島の一部を占領
④対中国
ⅰ.二十一カ条の要求:1915年
・中国の袁世凱政府に対して出す
※内容
・山東省のドイツ権益の継承
・南満州および東部内蒙古の権益強化
・ 福建省の他国に対する不割譲の再確認
・旅順・大連の租借期限と満鉄の権益期限の延長(99カ年)
・漢冶萍公司の日中合弁化
⇒日本は最後通牒を発し、大部分を承認させる
ⅱ.中国国内の動き
・中国国民は反発、抗日運動の激化
・袁世凱政府が要求を受け入れた5月9日を国恥記念日とした
ⅲ.西原借款:1917~18年
・寺内正毅内閣が特使西原亀三を派遣
・段祺瑞政権(袁世凱の後継)に巨額の借款
・目的:段祺瑞政権の強化
⇒中国の統一と安定、日本の権益拡大
⑤対ロシア
第四次日露協約:1916年
・特殊権益を相互に擁護することを確認
⑥対アメリカ
石井・ランシング協定:1917年
・アメリカ:国務長官ランシング。日本の満州権益を承認
・日本:特派大使石井菊次郎。中国の門戸開放、機会均等を承認
3.ロシアの大戦離脱とシベリア出兵
①ロシア革命:1917年
・民衆が帝政と戦争継続に反対
・【レーニン】を指導者とする世界初の社会主義国家が誕生
・ドイツ・オーストリアと単独講和(ブレスト・リトフスク条約)
⇒ロシアは大戦から離脱
※ロシア革命により日露協約は消滅
②シベリア出兵:1918年
・寺内正毅内閣のとき
ⅰ.目的
・ロシア革命への干渉、社会主義国家成立の阻止
ⅱ.出兵の名目
・シベリアにいたチェコスロヴァキア軍将兵の救出
ⅲ.参加国
・日本、アメリカ、イギリス、フランスなど
⇒大戦後、列強は撤兵するが、日本は1922年まで駐兵
4.大戦景気
①日本経済への影響
・好景気になり、輸出急増(入超→出超)
・財政危機の解消
※1917年、金輸出禁止
・債務国から債権国になる
②各部門の成長・展開
ⅰ.生糸
・アメリカへの輸出増
ⅱ.紡績業
・中国で工場経営を行う在華紡の増加
ⅲ.綿織物
・アジア市場への輸出が増加
※戦争でヨーロッパ諸国が後退したため
ⅳ.造船・海運
・英米に次いで世界第3位の海運国となる
※世界的な船舶不足が背景
⇒船成金の出現
ⅴ.製鉄業
・八幡製鉄所の拡張
・満鉄が鞍山製鉄所を設立
ⅵ.化学
・薬品・染料・肥料の国内生産の成長
※交戦国ドイツからの輸入断絶のため
ⅶ.電力
・水力発電が発達
・猪苗代水力発電所から東京への長距離送電に成功
・電灯の普及、工業原動力に電力を使用
③工業生産額の伸長
・1914年から19年までに工業生産額が5倍に増加
⇒農業生産額を上回る
※工業生産額のうち、重化学工業が約30%を占める
ただし工業人口は農業人口の半分以下
④国民生活
・好景気で成金が生まれる一方、物価の高騰により民衆の生活は悪化