I.大正デモクラシーと社会運動
・大正デモクラシー…大正期における自由主義・民主主義的風潮
※柱となる理念:天皇機関説と民本主義
1.普選運動の高揚
・野党(憲政会など)が衆議院に男子普通選挙法案を提出
⇒原敬内閣(与党:立憲政友会)は時期尚早として却下
※納税資格を「3円以上」に引き下げるにとどまる
2.啓蒙運動
①黎明会
・1918年、吉野作造らが結成
・デモクラシー思想の拡大に努力
②東大新人会
・1918年、吉野作造の指導下に結成
・東大の学生らの団体
3.労働運動
・労働争議の発生
①背景
・国内:米騒動、労働者の急増、物価高
・国外:ロシア革命、民主主義・平和主義の提唱
②友愛会
・1912年、鈴木文治らが結成
・労資協調主義
↓
ⅰ.大日本労働総同盟友愛会
・1919年、友愛会から改称
※1920年、第1回メーデーを主催
↓
ⅱ.日本労働総同盟
・1921年に改称
・階級闘争主義へ転換
4.農民運動
①小作争議の発生
・小作人が地主に対し小作料の減免を要求した争い
②日本農民組合
・1925年、賀川豊彦、杉山元治郎らが結成
※小作人組合の全国的組織
5.社会主義運動
※大逆事件後は「冬の時代」となった
⇒ロシア革命、米騒動などを受けて活動再開
①社会主義政党
ⅰ.日本社会主義同盟
・1920年、社会主義者らが結集して結成
・翌年禁止
ⅱ.日本共産党
・1922年、堺利彦、山川均らにより結成
・コミンテルンの日本支部として非合法に結成
※コミンテルン…ソ連共産党の指導下につくられた国際共産党のこと
②無産政党
・労働者、小作人など無産階級の意見を代表する政党
・労働運動家、社会主義者らが参加
ⅰ.農民労働党
・1925年結成
・共産党との関係が疑われたため即日禁止
↓
ⅱ.労働農民党
・1926年、共産党系を排除して杉山元治郎らが結成
※1928年解散
③学問への弾圧
ⅰ.森戸事件:1920年
・東京帝国大学助教授森戸辰男を休職処分
・ロシアの無政府主義者クロポトキンの研究を危険思想として弾圧される
※無政府主義:明治末期以降、社会主義運動の活動理論となった
6.女性解放運動(婦人運動)
・背景:女子教育の発展、女子労働者の増加
①青鞜社:1911年設立
・平塚らいてうらによる女流文学者団体
・雑誌『青鞜』の発刊:「原始、女性は実に太陽であった」
②新婦人協会:1920年設立
・平塚らいてう、市川房枝らが結成
・活動の結果、1924年に【治安警察法】第5条改正:女性の政治集会参加が可能に
↓
・1924年、婦人参政権獲得期成同盟会に発展
・1925年、婦選獲得同盟となる
※のちに解散
③赤瀾会:1921年設立
・山川菊栄、伊藤野枝らが結成
・社会主義の立場での女性運動
7.部落解放運動
・全国水平社:1922年、西光万吉らが結成
8.国家主義運動
猶存社:1919年結成
・北一輝、大川周明らが結成
※北一輝の『日本改造法案大綱』は二・二六事件にも影響
9.関東大震災:1923年9月1日
※直前に加藤友三郎首相が病死
⇒9月2日に発足した第2次山本権兵衛内閣が対応
①被害と混乱
・死者・行方不明者10万人以上
・混乱下で朝鮮人・中国人殺傷事件がおこる
②亀戸事件
・東京の亀戸署内で労働運動家(社会主義者)10人が警察・軍隊により殺害
③甘粕事件
・憲兵大尉甘粕正彦が無政府主義者大杉栄、伊藤野枝を殺害
II.政党内閣の時代
1.清浦奎吾内閣:1924.1~24.6
※超然内閣
①第二次護憲運動
・超然内閣に対する倒閣運動が起こる
②護憲三派:第二次護憲運動の中心
・憲政会の加藤高明
・立憲政友会の高橋是清
・革新俱楽部の犬養毅
③清浦圭吾内閣の対抗
・政友本党(立憲政友会脱党者が結成)を味方につけ解散総選挙
④選挙結果
・護憲三派が圧勝し、清浦内閣総辞職
2.加藤高明内閣:1924.6~26.1
①護憲三派内閣
・憲政会、立憲政友会、革新俱楽部の連立内閣
・協調外交の展開:外相幣原喜重郎
②日ソ基本条約
・1925年、ソ連と国交樹立
・日本軍の北樺太からの撤兵
・北樺太の石油・石炭の開発権獲得
③普通選挙法:1925年成立
・納税資格を撤廃
・満25歳以上の全ての男子に選挙権を認める
※有権者の割合は人口の約20%に
④治安維持法:1925年成立
ⅰ.背景
・日ソ国交樹立による社会主義思想の波及防止
・普通選挙法による労働者階級の政治的影響力増大への備え
ⅱ.内容
・国体(天皇制)の変革や私有財産の否定を目的とする結社の禁止
・最高刑は10年以下の懲役or禁錮
※1928年、田中義一内閣のとき最高刑を死刑に
⑤陸軍軍縮の実施
⑥護憲三派が分裂
・憲政会の単独内閣となる
※分裂前を第1次、分裂後を第2次内閣とすることもある
ⅰ.立憲政友会
・総裁に田中義一が就任
ⅱ.革新俱楽部
・立憲政友会に吸収されて消滅
3.その後の政党内閣
①第1次若槻礼次郎内閣:1926.1~27.4
・憲政会
※加藤高明が病死し、その後継
②田中義一内閣:1927.4~29.7
・立憲政友会
③浜口雄幸内閣:1929.7~31.4
・立憲民政党(憲政会と政友本党が合流)
④第2次若槻礼次郎内閣:1931.4~31.12
・立憲民政党
⑤犬養毅内閣:1931.12~32.5
・立憲政友会
※五・一五事件で暗殺される:政党内閣の時代の終わり