1.社会保障とは
・国民の生存権を具体的に保障するものとして各国で整備されている
・ナショナル・ミニマム…国家が国民に保障すべき最低限度の生活水準のこと
→社会保障はナショナル・ミニマムの実現のために整備されている
2.世界の社会保障制度の歴史
①イギリス
・1601年、救貧法(エリザベス救貧法):世界初の公的扶助
・1942年、ベバリッジ報告
→戦後、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンとする体系的な社会保障制度を確立
②ドイツ
・1883年、疾病保険法:世界最初の社会保険制度
※鉄血宰相とよばれたビスマルクが整備した
・1919年、ワイマール憲法:生存権を世界で初めて保障
③アメリカ
・1935年、社会保障法:ニューディール政策の一環として制定
※「社会保障」という言葉が世界で初めて用いられた
④国際的な動き
・1944年、フィラデルフィア宣言…ILO(国際労働機関)が社会保障の国際的原則を示し、各国に勧告
3.日本の社会保障制度
※戦前
・1874年、恤救規則:身寄りがなく働けない極貧者を対象とする
※戦後:日本国憲法第25条で生存権の保障と国家の義務を規定
→日本の社会保障制度は以下①~④の4つの柱で構成
①社会保険
・疾病、老齢、死亡、障害などに対し、一定の保険金が支払われる
・医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、2000年導入の介護保険の5つ
・後期高齢者医療制度:医療保険に含まれる。2008年から75歳以上を対象に導入
※1958年、国民健康保険法の改正
1959年、国民年金法の制定
→これにより、1961年に国民皆保険と国民皆年金が実現
※年金の財源の調達方法
・積立方式…被保険者が在職中に積み立てた保険料で将来の年金の給付をまかなう方式
・賦課方式…毎年必要な給付金額を現役層の負担で調達する方式
→現在の日本は修正賦課方式(賦課方式を基本に積立方式を加味)
②公的扶助
・すべての国民に最低限度の生活を保障するための制度
・生活保護法にもとづいて実施
③社会福祉
・保護や援助を必要とする人たちに対し、手当や施設・サービスを提供する
・児童福祉、母子福祉、身体障害者福祉、知的障害者福祉、老人福祉がある
・社会福祉法と福祉六法にもとづいて実施
④公衆衛生(公衆・環境衛生)
・国民の健康増進と、生活環境の改善・向上をめざす
・保健医療:保健所と公営病院が感染症の予防・早期発見・治療などを行う
・環境政策:自然保護、公害対策など
4.高齢化の進行と社会
・高齢化社会…65歳以上(老年人口)の割合が全人口の7%以上14%未満の社会
※日本は1970年に到達
・高齢社会…65歳以上の割合が全人口の14%以上21%未満の社会
※日本は1994年に到達
・超高齢社会…65歳以上の割合が全人口の21%以上の社会
※日本は2007年に世界で初めて到達
5.その他の用語
①ノーマライゼーション
・障害の有無や年齢にかかわらず、すべての人が人間として普通の生活をともに送れる社会をめざすという考え方、取り組み。
②バリアフリー
・障害者や高齢者が普通の生活を送れるように、身体的・精神的な障壁を取り除こうという考え方
例)階段の横にスロープを設置する
漢字の読み方
・救貧法:きゅうひんほう
・公的扶助:こうてきふじょ
・疾病保険法:しっぺいほけんほう
・鉄血宰相:てっけつさいしょう
・恤救規則:じゅっきゅうきそく
・国民皆保険:こくみんかいほけん
・国民皆年金:こくみんかいねんきん
・積立方式:つみたてほうしき
・賦課方式:ふかほうしき