1.現代の通貨制度
①金本位制度
・中央銀行が兌換紙幣を発行し、金との交換を保証することで通貨価値を裏付ける制度
・1930年代まで多くの国で採用
②管理通貨制度
・各国の中央銀行が独自の判断により不換紙幣を発行する通貨制度
※不換紙幣:金と交換できない紙幣
・世界恐慌後、多くの国が採用
・現在はすべての国が採用
2.マネーストック
・国内の個人や法人が保有する通貨の総量
・現金通貨と預金通貨では、預金通貨が圧倒的に多い
3.金融の機能
①金融とは
・資金に余裕のある経済主体が、資金を必要とする経済主体に資金を貸し出すこと
・金融機関:銀行、信用金庫、農協、保険会社、証券会社など
ⅰ.直接金融
・国民の資金が企業などに直接渡る
・企業や政府が発行する証券を家計が購入
例) 株式、社債、国債など
ⅱ.間接金融
・国民の資金が銀行をはさんで間接的に企業に渡る
例)銀行が家計から受け入れた資金(預金)を、企業に貸し出す
4.銀行の役割
①金融仲介機能
・家計などから資金を預かり、企業や政府などに貸し出す機能
※間接金融として行われること
・預金業務:当座預金、普通預金、定期預金がある
・貸出業務:個人向けと企業向け融資がある
→回収できないと不良債権となる
②支払決済機能
・現金を使わず、預金口座間の移動で送金や支払いができる機能
③信用創造機能
・銀行が預金の受け入れと貸し出しをくり返すことで、当初の預金額(現金通貨)を大きく超えた額の預金通貨をつくりだす機能
5.日本銀行のはたらき
・日本銀行:日本の中央銀行
①発券銀行
・紙幣(日本銀行券)を発行する
②銀行の銀行
・一般の銀行など金融機関に対して預金の受け入れや貸し出しを行う
③政府の銀行
・税金などの国庫金を管理する
6.金融政策
・日本銀行が行う景気・物価の安定政策
※金融市場の通貨量を調整する
①公開市場操作(オープンマーケット・オペレーション)
・日本銀行が市中の金融機関に対して有価証券の売買を行い、通貨量を調整する
・現在の金融政策の中心
ⅰ.売りオペレーション
・おもに好況時に実施
・日本銀行は一般の銀行に国債(有価証券)を売り、市中に出回っている通貨を吸収する
→市中の通貨量を減らし(金融引き締め)、インフレを抑制
ⅱ.買いオペレーション
・おもに不況時に実施
・日本銀行は一般の銀行から有価証券を買い、保有する通貨を市中に供給する
→市中の通貨量を増やし(金融緩和)、デフレ解消、景気の改善へ
②政策金利操作
・民間銀行の金利に影響を与える金利を操作し、通貨量を調節する
ⅰ.公定歩合
・かつての金融政策の中心
・公定歩合…日本銀行が市中の金融機関に資金を貸し出す際の利子率
※好況時は利子率を上げ、不況時は利子率を下げる
・公定歩合は、2006年より「基準割引率および基準貸付利率」とよぶ
ⅱ.無担保コールレート翌日物
・コール市場における金利
(返済期限が翌日まで)
※コール市場…銀行どうしの短期金融市場
③預金準備率操作(支払準備率操作)
・市中銀行が日本銀行に預金の一部を支払準備金として預ける割合を操作
・好況時は上げる。不況時は下げる
・1991年10月以降実施されていない
7.近年の日本銀行の政策
①ゼロ金利政策
・政策金利を実質ゼロにする政策
※2016年からはマイナス金利政策を実施
②量的緩和政策
・市中の資金供給を増やし、金融機関の保有する貸し出し用の資金を増やす政策
・2001~06年実施。2013年から再び実施
8.日本版金融ビッグバン
・1990年代後半に実施された、日本の金融制度の大改革
・フリー、フェア、グローバルをスローガンとした
9.金融行政の展開
①各種機関
・預金保険機構…経営破綻で預金の払い戻しが不可能になった金融機関に代わり、預金者に払い戻しを行う機関
・金融庁…2000年設置。金融機関の検査・監督、金融制度の事務を取り扱う官庁
②BIS規制
・1993年より実施
・国際決済銀行(BIS)による規制
・国際業務を行う銀行は自己資本比率を8%以上にすることを求めた
(国内業務のみの銀行は4%以上)
→銀行は積極的な融資が従来よりも困難に
③ペイオフ
・破綻した金融機関の預金保護額を一定限度までとする制度
・金融機関1つにつき普通預金の元本1000万円とその利子まで保護
・2005年より完全実施。2010年に初の発動
漢字の読み方
・金本位制度:きんほんいせいど
・兌換紙幣:だかんしへい
・不換紙幣:ふかんしへい
・公定歩合:こうていぶあい
・基準割引率および基準貸付利率:きじゅんわりびきりつおよびきじゅんかしつけりりつ
・無担保コールレート翌日物:むたんぽコールレートよくじつもの
・預金準備率操作:よきんじゅんびりつそうさ
・支払準備率操作:しはらいじゅんびりつそうさ
・量的緩和政策:りょうてきかんわせいさく
・BIS規制:ビスきせい
・BIS:ビーアイエス