政治経済:企業、会社、株式会社(解説)

1.多様な企業形態

①企業の種類

企業にはさまざまな種類があるのですが、まず最も大きな分類が、公企業私企業・公私合同企業です。私企業はさらに個人企業と共同企業に分かれて、共同企業がさらに組合企業会社企業に分かれて、会社企業に合同会社合資会社合名会社株式会社・特例有限会社がある、ということになっています。

 

かつては有限会社もありましたが、会社法の施行により新規設立は不可となり(かわりに合同会社が新設された)、現在もある有限会社は、法律上は特例有限会社として、株式会社の1つということになっています。

 

長くなりましたが、企業のなかに会社があるので(企業=会社とは必ずしもならない。農家も企業である(個人企業))、経済の三主体を問われて「会社」と書いてはいけない理由もここにあります。

 

②さまざまな会社

さて、高校の政治経済や現代社会では、企業のなかでも会社企業に着目します。

合名会社・合資会社・合同会社、面倒ですが憶えるしかありません。合名・合資・合同の意味は考えなくていいです。辞書で調べて、それが憶える助けになるのであればそうしてください。

 

・「社員」とは何か。

次に、無限責任社員有限責任社員ですが、「社員」という言葉に注意が必要です。一般的に「社員」というと、「会社員」「正社員」「契約社員」「派遣社員」という言葉があるように、「会社で働いている人」「サラリーマンのこと」という使われ方をしていますが、法律上は異なります。

 

社員とは出資者のことです。したがって、無限責任社員とは、出資者(会社設立のための資金を出した人)のうち、会社の借金=自分の借金となる人です。責任が無限なので、自分の財産をなげうってでも会社の借金を返さなければならない人です。

有限責任社員の場合は、会社の借金は自分の借金ではないので、会社が倒産しても自分の財産から返済する必要はありません。自分の出した資金が返ってこないだけです(有限責任)。

 

社員=出資者なので、株式会社の株主も会社のためにお金を出しているのですから、株主は社員(有限責任社員)となります。株主は、会社が倒産しても借金を返済する義務はないので、有限責任です。株式を購入したお金が丸々なくなるだけで、それ以上の返済を求められることはありません。

 

・会社員・サラリーマンが社員ではないのなら、何と呼ぶ?

会社員・サラリーマン、パート・アルバイトなどは、法律上は「従業員」となります。従業員は、法律上は会社の外部の存在です。外部の人間であるからこそ、多く働き過ぎたら残業代が出るわけです。

逆に、株主は会社の内部の存在になります(違和感がありますが)。

ある人がA社で働いている場合は、「私はA社の従業員です」となります。この人がB社・C社・D社の株を買ったら、「私はA社の従業員で、B社とC社とD社の社員でもあります」となるのです。

 

2.株式会社 

所有と経営の分離」についてですが、まず、株式会社は株主のもの(株主が所有している)ということになります。ですが、株主は経営に関しては素人の場合が多いので、経営については経営のプロに任せます。この経営のプロが取締役(経営者)として活動するのが大企業では一般的になっています(雇われ社長みたいな感じです)。株主は、カネは出すが経営に口出しはしないというスタンスです。

 

ただし、中小企業では株主が経営者を兼ねることが多いですし、自分で株式会社を設立して社長として大企業まで育てたような場合も、分離はしないことが多いです。

 

②企業経営に関するさまざまな用語

板書に示した以外にも、M&A他社に対する合併・買収)、R&D研究・開発)などの重要語句があります。