1.司法権の独立
・司法権が内閣や国会から干渉を受けず、独立していること
①裁判所の独立
・他の国家機関からの独立(憲76・77条)
・すべて司法権は、最高裁判所及び下級裁判所に属する。(憲76条①)
・大日本帝国憲法下で設置されていた特別裁判所を禁止(憲76条②)
②裁判官の独立
・「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」(憲76条③)と規定
・個々の裁判官が干渉を受けず、独立して職権を行使することを保障
・他の権力だけでなく他の裁判官からの干渉も排除
※裁判官が罷免される場合
・心身の故障(憲78条)
・公の弾劾(憲78条)
※国会設置の弾劾裁判所で罷免される場合
・国民審査で罷免が決定された場合(憲79条②③)
※対象は最高裁判所裁判官のみ
2.裁判所の構成
・最高裁判所と下級裁判所で構成(憲76条①)
①最高裁判所
・15人の裁判官で構成:長官1人とその他の裁判官14人
・最高裁判所の長官は、内閣が指名し天皇が任命する
・最高裁判所の裁判官は、内閣が任命し天皇が認証する
②下級裁判所
ⅰ.高等裁判所
・全国8か所
・最上位の下級裁判所
・おもに第2審を扱う
ⅱ.地方裁判所
・全国50か所。各都府県に1か所、北海道に4か所
・おもに第1審を扱う
ⅲ.家庭裁判所
・全国50か所(地方裁判所と同じ)
・少年事件、家庭内事件などを扱う
ⅳ.簡易裁判所
・全国438か所。比較的軽い事件を扱う
③その他
・知的財産高等裁判所:2005年設置
・東京高等裁判所の特別支部として設置
→知的財産権に関する訴訟を専門的に扱う
3.裁判の種類
①民事裁判
・私人間の争いを解決するための裁判
→お金の貸し借り、交通事故など
・原告・被告の主張を聞き、裁判官が法に基づいて判決を下す
・和解すれば、裁判の途中で終了する
②行政裁判
・国や地方公共団体を相手に起こす裁判
※国や地方公共団体が被告となる
・民事裁判の1つ。手続きは民事裁判と同じ
③刑事裁判
・法律で犯罪とされる事件を審理する裁判
・検察官が被疑者を起訴して行われる
・被疑者:犯罪をした疑いのある者
・被告人:被疑者は起訴されると被告人とよばれる
・裁判官が法に基づいて判決を下す
→有罪の場合は刑罰も決める
・裁判は罪刑法定主義に基づいて行われる
・被害者参加制度:2008年から導入
4.三審制
・1つの事件(裁判)について3回まで裁判を受けられる制度
※民事裁判・刑事裁判のどちらも
・控訴:第一審の判決に不服の場合に上訴すること
・上告:第二審の判決に不服の場合に上訴すること
5.再審制度
・判決の確定した裁判をやり直す制度
・再審請求を受理して行われる
※合理的な疑いがもたれる新たな証拠が出てきたとき
・冤罪発生時の救済のためにも必要
※冤罪:無実であるのに有罪とされること
6.違憲法令審査権(違憲審査権)
・法律・命令などが憲法に違反しないかを審査する権限
・最高裁判所だけでなく、すべての裁判所が有している
・最高裁判所は「憲法の番人」とよばれる
→違憲審査に関して最終的な判断を下すから
7.検察審査会
・有権者からくじ(抽選)で選ばれた検察審査員で構成
・検察官に不起訴処分とされた事件について、その当否を審査
⇒2度にわたり「起訴相当」と判断した場合、強制起訴となる(裁判を行う)
8.裁判員制度
・司法制度改革の1つとして開始
・2004年、裁判員法の制定
→2009年から実施
・事件ごとに、有権者からくじ(抽選)で裁判員が選ばれる
・重大な刑事事件が対象
※法定刑に死刑・無期刑が含まれる罪の事件
・事実審理を行う:有罪・無罪の判断
・法律判断も行う:有罪な場合、具体的な量刑を決める
・原則として、裁判員6名、裁判官3名で審理
・裁判員裁判が行われるのは第一審のみ
漢字の読み方
・罷免:ひめん
※職を辞めさせること
・心身の故障:しんしんのこしょう
・公の弾劾:おおやけのだんがい
・簡易裁判所:かんいさいばんしょ
・知的財産高等裁判所:ちてきざいさんこうとうさいばんしょ
・被疑者:ひぎしゃ
※一般的に「容疑者」と言われるが、試験では書かない
・三審制:さんしんせい
・控訴:こうそ
・上告:じょうこく
・再審:さいしん
・冤罪:えんざい