文化・文政時代(大御所時代)
・11代将軍徳川家斉の治世(約50年間)
・大御所政治:1837年、12代将軍徳川家慶に将軍職をゆずるが、退任後も大御所として実権掌握
1.文化年間(1804~18年)
・寛政の改革路線(質素倹約)は維持された
2.文政年間(1818~30年)
・放漫財政:品位の劣る文政小判の発行により、幕府財政は好転
→将軍・大奥の生活の華美化、幕府財政の圧迫
・商人の経済活動の活発化、化政文化の起こり
3.治安維持
・特に関東の農村で無宿者や博徒らによる治安の悪化
①関東取締出役の設置:1805年
・関八州を巡察、領主の区別なく逮捕が可能
※幕領・私領等にとらわれず、広域的な警察活動が可能に
②寄場組合(改革組合村)の設置:1827年
・関東の全農村に対し、幕領・私領・寺社領を問わず近隣の村々で結成させた組合村
→関東取締出役の配下に置かれ、地域の治安維持等にあたる
4.天保の飢饉(1833~39年)と混乱
①百姓一揆の発生
・1836年、甲斐国で郡内騒動(郡内一揆):80カ村・1万人
・1836年、三河国で加茂一揆:240カ村・1万2000人
※いずれも幕領で発生
②大塩の乱
・1837年、大坂町奉行所の元与力で陽明学者の大塩平八郎が反乱
・大塩は隠退して家塾洗心洞を主宰、門弟に陽明学を講義
→反乱は半日で鎮圧されたが、直轄地で幕府の元役人が起こした反乱に衝撃が走る
③全国への波及
・生田万の乱:「大塩門弟」と称して越後柏崎で代官所を襲撃
・大塩の乱に共鳴する百姓一揆の頻発
・幕府の対応(江戸):救い小屋を設け、江戸で打ちこわしは起こらず
5.モリソン号事件
①事件の概要
・1837年、通商要求と漂流民を送り届けに来たアメリカ船モリソン号を、異国船打払令にもとづき砲撃した事件
②幕府への批判
・渡辺崋山:著書『慎機論』
・高野長英:著書『戊戌夢物語』
③蛮社の獄
・1839年、幕府を批判した渡辺崋山と高野長英を処罰
・渡辺崋山は永蟄居、高野長英は永牢
6.天保の改革
①特徴
・老中水野忠邦による改革
・大御所徳川家斉の死後、1841~43年に実施
※12代将軍徳川家慶の時期
・背景:財政難と内憂外患
※内憂:大塩の乱
外患:モリソン号事件
②改革のおもな内容
ⅰ.倹約令・風俗取締令
・高価な菓子・料理の禁止
・歌舞伎劇場(江戸三座)を浅草のはずれに移転
・人情本作者為永春水、合巻作者柳亭種彦の処罰
※寛政の改革で処罰されたのは、洒落本作者山東京伝、黄表紙作者恋川春町
ⅱ.株仲間解散令
・物価上昇の原因は株仲間による流通の独占にあると判断し、十組問屋などの株仲間を解散させる
・結果:江戸への商品輸送量が減少して逆効果に終わる
→1851年、株仲間再興令が出され、株仲間再結成
ⅲ.人返しの法
・百姓の出稼ぎ禁止
・江戸流入の貧民の帰郷を強制
ⅳ.棄捐令
・旗本・御家人の救済が目的
・札差らに低利の貸し付けを命じる
※寛政の改革でも発令
ⅴ.三方領知替
・武蔵川越藩を出羽庄内藩へ、庄内藩を越後長岡藩へ、長岡藩を川越藩へ領地入れ替え
※領民の反対などにより撤回
ⅵ.上知令
・江戸・大坂周辺の領地約50万石分の直轄化を命じた
・財政の安定、対外防備の強化のため
→大名・旗本の反対で撤回
※幕府権力の衰退、幕府に対する藩権力の自立を示す結果
・これを機に水野忠邦失脚
ⅶ.印旛沼掘削工事
・水野忠邦の失脚で中止
※田沼の政治では印旛沼・手賀沼の干拓(失敗)
漢字の読み方
・徳川家斉:とくがわいえなり
・徳川家慶:とくがわいえよし
・文化:ぶんか
・文政:ぶんせい
・化政文化:かせいぶんか
・関東取締出役:かんとうとりしまりしゅつやく
・関八州:かんはっしゅう
※関東の8カ国のこと
・寄場組合:よせばくみあい
・改革組合村:かいかくくみあいむら
・天保の飢饉:てんぽうのききん
・郡内騒動:ぐんないそうどう
・加茂一揆:かもいっき
・与力:よりき
・陽明学者:ようめいがくしゃ
・大塩平八郎:おおしおへいはちろう
・洗心洞:せんしんどう
・生田万:いくだよろず
・柏崎:かしわざき
・渡辺崋山:わたなべかざん
※華:× 崋:○
・慎機論:しんきろん
・高野長英:たかのちょうえい
・戊戌夢物語:ぼじゅつゆめものがたり
・蛮社の獄:ばんしゃのごく
・永蟄居:えいちっきょ
・永牢:えいろう
・天保の改革:てんぽうのかいかく
・水野忠邦:みずのただくに
・内憂外患:ないゆうがいかん
・人情本:にんじょうぼん
・為永春水:ためながしゅんすい
・合巻:ごうかん
・柳亭種彦:りゅうていたねひこ
・洒落本:しゃれぼん
・山東京伝:さんとうきょうでん
・黄表紙:きびょうし
・恋川春町:こいかわはるまち
・株仲間解散令:かぶなかまかいさんれい
・十組問屋:とくみといや
・株仲間再興令:かぶなかまさいこうれい
・人返しの法:ひとがえしのほう
・棄捐令:きえんれい
・三方領知替:さんぽうりょうちがえ
・上知令:じょうちれい(あげちれい)
・印旛沼掘削工事:いんばぬまくっさくこうじ