1.元との貿易
※私貿易。国交なし
①建長寺船:1325年
・鎌倉幕府(執権北条高時)が派遣
・目的:建長寺修造の費用を得るため
②天龍寺船:1342年
・足利尊氏・直義兄弟が夢窓疎石のすすめにより派遣
・目的:後醍醐天皇の冥福を祈るための天龍寺建立の費用を得るため
2.倭寇の台頭
・倭寇…対馬・壱岐・肥前松浦地方などを根拠地とする海賊集団
①前期倭寇
・日本人中心
・14世紀(南北朝の動乱期)に活動
・足利義満が取り締まり、日明貿易の開始とともに沈静化
②後期倭寇
・中国人中心
・日明貿易の断絶後、16世紀後半に活動
・豊臣秀吉が海賊取締令で禁止
3.明の成立と貿易
・1368年、朱元璋(太祖洪武帝)が建国した、漢民族の王朝
・明は中国を中心とする国際秩序の回復をめざす
→日本に対し、倭寇の禁止と通交を求める
①日明貿易の開始
ⅰ.開始
・1401年、明の呼びかけに応じた足利義満が使者を派遣
※正使:僧祖阿
副使:博多商人肥富
ⅱ.貿易の特徴
・貿易の形態は朝貢貿易
・各国の「国王」が、明の皇帝に朝貢する
→足利義満が明の皇帝から日本国王と認められ、貿易を許される
・滞在費・運搬費は明が負担したため、日本側に大きな利益をもたらす
②勘合貿易の開始:1404年~
・明との貿易に勘合を使用
・勘合:明から交付され、倭寇と正式な貿易船を区別するために使用
・輸出品:武器・武具類、工芸品、鉱産物(銅・硫黄)
・輸入品:銅銭、生糸、書籍、書画、陶磁器など
③貿易の中断と再開
・4代将軍足利義持が朝貢形式を嫌って中止
・6代将軍足利義教のときに再開
※貿易による利益を重視。貿易の利益は幕府の重要財源の1つ
④日明貿易の変化
ⅰ.幕府の衰退:15世紀後半以降
・貿易の実権が移行
・堺商人と結んだ細川氏
・博多商人と結んだ大内氏
→両者は対立し、1523年、寧波の乱で衝突。勝利した大内氏が貿易を独占
ⅱ.日明貿易の断絶
・16世紀半ば、大内氏が滅亡(下剋上で滅ぼされる)
→日明貿易は断絶。後期倭寇の出現を招く
4.朝鮮の建国と日朝貿易
・1392年、李成桂が高麗を倒して朝鮮を建国
→日本に倭寇の禁止と通交を求め、足利義満がこれに応じて国交開始
①日朝貿易
ⅰ.三浦
・朝鮮は三浦(富山浦、乃而浦、塩浦)の3港を開港して日本と貿易
ⅱ.倭館
・三浦と首都の漢城に設置
・日本の使節の接待と貿易に使用された
ⅲ.おもな輸出入品
・輸出品:銅・硫黄、蘇木・香木など
・輸入品:木綿を中心とする織物類、大蔵経など
ⅳ.応永の外寇:1419年
・朝鮮軍が対馬を倭寇の本拠地とみなして襲撃
→貿易が一時中断
②三浦の乱:1510年
・三浦に住む日本人が、与えられていた特権の縮小に不満を持ち暴動を起こす
→以後、日朝貿易は衰退
5.琉球
①三山の対抗と統一
・北山・中山・南山の3勢力が争う。それぞれ明に朝貢
→1429年、中山王の尚巴志が三山を統一し、琉球王国を建国
②琉球王国の繁栄
・首都:首里
・中継貿易で栄える:明、日本、朝鮮、東南アジア諸国との貿易を展開
・引き続き明に朝貢
→明滅亡後は清に朝貢
6.蝦夷ヶ島
・現在の北海道南部
①和人の進出と交易、対立
ⅰ.アイヌ
・古くから北海道に住む人々
・漁労・狩猟、交易を生業とする
※鎌倉時代は安藤(安東)氏と交易
ⅱ.館
・土塁や空濠で囲まれた小規模な城砦
・道南十二館:12あった和人の城館
→アイヌとの交易や領域支配の拠点とした
例:志苔館:現在の函館市。約37万枚の中国銭が出土
ⅲ.大首長コシャマインの蜂起:1457年
・不利な交易・圧迫への不満から
→和人居住地の大部分を攻め落とすが、蠣崎氏が鎮圧
②その後の蝦夷地
・蠣崎氏が道南地域の和人居住地を支配
・蠣崎氏は江戸時代に松前氏となり、蝦夷地を支配する大名に成長
漢字の読み方(タップで開きます)
・建長寺船:けんちょうじせん・天龍寺船:てんりゅうじせん
・夢窓疎石:むそうそせき
・倭寇:わこう
・対馬:つしま
・壱岐:いき
・肥前松浦:ひぜんまつら
・明:ミン
・朱元璋:しゅげんしょう
・太祖洪武帝:たいそこうぶてい
・日明貿易:にちみんぼうえき
・祖阿:そあ
・肥富:こいつみ
・日本国王:にほんこくおう
・勘合貿易:かんごうぼうえき
・硫黄:いおう
・銅銭:どうせん
・生糸:きいと
・足利義持:あしかがよしもち
・足利義教:あしかがよしのり
・寧波の乱:ニンポーのらん
・李成桂:りせいけい
・朝鮮:ちょうせん
・日朝貿易:にっちょうぼうえき
・三浦:さんぽ
・富山浦:ふざんほ
・乃而浦:ないじほ
・塩浦:えんぽ
・倭館:わかん
・木綿:もめん
・大蔵経:だいぞうきょう
・応永の外寇:おうえいのがいこう
・三浦の乱:さんぽのらん
・北山:ほくざん
・中山:ちゅうざん
・南山:なんざん
・尚巴志:しょうはし
・琉球王国:りゅうきゅうおうこく
・首里:しゅり
・中継貿易:なかつぎぼうえき
・蝦夷ヶ島:えぞがしま
・和人:わじん
・安藤(安東)氏:あんどうし
・館:たて
・土塁:どるい
・空濠:からぼり
・城砦:じょうさい
・道南十二館:どうなんじゅうにたて
・志苔館:しのりだて(しのりたて)
・蠣崎氏:かきざきし
・松前氏:まつまえし