1.農業の発展
①農業生産基盤の充実
ⅰ.用水の整備
・箱根用水:芦ノ湖を水源とする
・見沼代用水:利根川から分水
ⅱ.新田開発
※年貢の増収を見込んで幕府・諸藩が積極的に開発
・町人請負新田…有力な商人が資金を拠出する新田開発のこと
※耕地面積の変化
→江戸時代初めの164万町歩から、18世紀初めには297万町歩へ。約2倍に増加
②農具の発達
・備中鍬:深耕用。刃先が3~4本に分かれている
・千歯扱:脱穀用。それまでは扱箸を使用していた
・唐箕:選別用。中国から伝来。風を起こして籾殻をとり除く
・千石簁:選別用。金網の上に穀類を流し、粒の大きさで選別
・踏車:灌漑用の小型揚水車。それまでは竜骨車を使用
※それぞれ図で確認しておきましょう!
③農村の変質
ⅰ.商品作物の生産
・商品作物…四木三草、綿花、タバコ、野菜、果物など、販売目的の作物
→貨幣経済の農村への浸透を促進
※四木:漆、茶、楮、桑
※三草:麻、藍、紅花
ⅱ.各地の特産物(商品作物の例)
・出羽村山(最上)地方の紅花、駿河・山城宇治の茶、薩摩(琉球)の黒砂糖、越前の奉書紙、紀伊のみかんなど
④肥料の普及
・刈敷:山野から刈り取る草
※鎌倉時代から利用
・下肥:人糞尿を肥料として、都市部周辺で利用
※おもに室町時代から利用
・金肥:金銭を支払って購入・利用する肥料。干鰯・〆粕・油粕など
干鰯:鰯を日干しにしたもの。房総がおもな漁獲地(養殖ではない)
油粕:菜種から油を絞り取った残り
〆粕:鰯などの魚や胡麻・豆から油を絞り取った残り
④農書
・農業技術の解説書。江戸時代に普及
ⅰ.『清良記』
・17世紀前半、最初の農書とされる
※土居清良の軍物語の一部
ⅱ.『農業全書』
・17世紀末、宮崎安貞の著
・最初の本格的な農書
ⅲ.『農具便利論』
・19世紀、大蔵永常の著
・数十種類の農具を図示し、用法を記した
ⅳ.『広益国産考』
・19世紀、大蔵永常の著
・約60種類の作物の栽培法、商品作物加工による農家の利益や国益を論じた
2.商業の展開
①豪商
ⅰ.初期豪商
・17世紀前半、朱印船貿易で栄えた
・権力者と結んだ特権的商人
・全国的な海上・水上交通網の整備により衰退
・京都の角倉了以と茶屋四郎次郎、摂津平野の末吉孫左衛門など
ⅱ.元禄豪商
・17世紀後半。三都の繁栄を背景に出現。両替商も兼ねる
・大坂:鴻池家
・江戸:三井家(三井高利が祖。越後屋呉服店を経営)、紀伊国屋文左衛門
②流通機構の形成
※流通機構:生産者→生産地の仲買→問屋→都市の仲買→小売商人→消費者という流れ
ⅰ.問屋
・各地からの商品の受託・仕入れを独占
・仲間(同業者の団体)を結成し、営業を独占
・問屋仲間の連合体:江戸で十組問屋、大坂で二十四組問屋を結成
ⅱ.仲買
・問屋の支配下で卸売を独占
ⅲ.小売商人
・振売・棒手振など小規模な形で消費者に商品を販売
3.その他の産業の発達
①漁業
・上総九十九里浜の鰯漁:地曳網を使用
・松前(蝦夷地)の鰊漁・昆布漁
→鰯・鰊は干鰯・〆粕などにも加工され、金肥として流通
・土佐の鰹漁
・蝦夷地:昆布、俵物の生産
・俵物…いりこ・ほしあわび・ふかのひれなどを俵に詰めたもの
→17世紀末以降、銅にかわって長崎貿易における清への主要輸出品目に
②製塩業
・瀬戸内海沿岸部を中心に入浜塩田が発達
※それまでは揚浜法が中心
③林業
・都市造営のための建築資材の需要増で急速に発達
・木曽檜、秋田杉が有名
④鉱山業
ⅰ.銅
・17世紀後半に金・銀の産出量が激減する一方、銅の産出量が増加
・おもな銅の産出地:足尾銅山、別子銅山など
ⅱ.製鉄
・たたら製鉄…砂鉄と木炭を交互に炉に入れ、燃焼させる日本式製鉄法
※たたら…足踏み式の送風装置のある炉
⑤手工業、その他
ⅰ.織物業
・綿織物:地機(いざり機)で生産
※戦国期に朝鮮から伝わった木綿が、庶民の衣服として急速に普及していた
・絹織物:京都の西陣で生産(西陣織)。高度な技術を要する高機で生産
→18世紀中頃には、桐生・足利など北関東でも生産
ⅱ.和紙
・原料:楮(四木の1つ)
・越前の鳥の子紙、美濃紙など
・紙の専売制による藩財政の好転などをもたらす
ⅲ.陶磁器
・磁器:肥前の有田焼は佐賀藩の保護下で生産され、長崎貿易で輸出
・尾張の瀬戸焼、京都の清水焼など
ⅳ.醸造業
・灘の酒、伏見の酒
・銚子や野田の醬油
漢字の読み方
・箱根用水:はこねようすい
・芦ノ湖:あしのこ
・見沼代用水:みぬまだいようすい
・利根川:とねがわ
・干拓:かんたく
・新田開発:しんでんかいはつ
・町人請負新田:ちょうにんうけおいしんでん
・備中鍬:びっちゅうぐわ
・深耕用:しんこうよう
※深くたがやす
・千歯扱:せんばこき
・脱穀用:だっこくよう
・扱箸:こきばし
・唐箕:とうみ
・籾殻:もみがら
・千石簁:せんごくどおし
・踏車:ふみぐるま
・灌漑:かんがい
・揚水車:ようすいしゃ
・竜骨車:りゅうこつしゃ
・四木三草:しぼくさんそう
・漆:うるし
・楮:こうぞ
・桑:くわ
・麻:あさ
・藍:あい
・紅花:べにばな
・奉書紙:ほうしょがみ
・刈敷:かりしき
・下肥:しもごえ
・人糞尿:じんぷんにょう
・金肥:きんぴ
・干鰯:ほしか
・鰯:いわし
・油粕:あぶらかす
・〆粕:しめかす
・農書:のうしょ
・清良記:せいりょうき
・土居清良:どいきよよし(どいせいりょう)
・農業全書:のうぎょうぜんしょ
・宮崎安貞:みやざきやすさだ
・農具便利論:のうぐべんりろん
・大蔵永常:おおくらながつね
・広益国産考:こうえきこくさんこう
・初期豪商:しょきごうしょう
・角倉了以:すみのくらりょうい
・茶屋四郎次郎:ちゃやしろうじろう
・末吉孫左衛門:すえよしまござえもん
・元禄豪商:げんろくごうしょう
・鴻池家:こうのいけけ
・三井高利:みついたかとし
・越後屋呉服店:えちごやごふくてん
・紀伊国屋文左衛門:きのくにやぶんざえもん
・問屋:といや
・仲間:なかま
・十組問屋:とくみといや
・二十四組問屋:にじゅうしくみといや
・仲買:なかがい
・振売:ふりうり
・棒手振:ぼてふり
・鰯漁:いわしりょう
・地曳網:じびきあみ
・鰊漁:にしんりょう
・昆布漁:こんぶりょう
・鰹漁:かつおりょう
・俵物:たわらもの
・入浜塩田:いりはまえんでん
・揚浜法:あげはまほう
・木曽檜:きそひのき
・秋田杉:あきたすぎ
・足尾銅山:あしおどうざん
・別子銅山:べっしどうざん
・地機:じばた
・いざり機:いざりばた
・西陣織:にしじんおり
・高機:たかばた
・桐生:きりゅう
・鳥の子紙:とりのこがみ
・美濃紙:みのがみ
・灘の酒:なだのさけ
・伏見の酒:ふしみのさけ
・銚子:ちょうし
・醬油:しょうゆ