日本史(テーマ):江戸時代の社会・経済

1.江戸時代の村、町

①村の自治

村方三役名主組頭百姓代の村役人。本百姓が就く

 ※名主は関西では庄屋、東北では肝煎とよばれた

村法(村掟)を制定し、村を運営

 →違反者には村八分などの制裁

本百姓:自分の田畑を持つ百姓。村方三役に就ける。年貢を負担

水呑百姓:自分の田畑を持たない

 

②本百姓の負担

本途物成…本百姓の負担の中心となる年貢。四公六民五公五民が一般的

小物成…本途物成以外の雑税の総称。農業以外の副業などに賦課

伝馬役…街道周辺の村々が提供した人や馬などの負担

助郷役…人馬不足の際に補助人足を差し出す村(助郷)の負担

 

③幕府の農村政策

・1643年、田畑永代売買の禁止令:土地の売買・権利の移動を禁止

田畑勝手作の禁:穀物以外の商品作物の栽培禁止。のちに形骸化

・1673年、分地制限令:耕地の分割相続を制限し、田畑の細分化を防ぐために発令

五人組:年貢納入や犯罪防止などで連帯責任を負わせる

 

④町と町人

:町人地に多数存在した共同体 

町人:町に住む家持の住人

・町役人の町年寄名主(町名主、庄屋)月行事が町政を担う

 ※町法(町掟)を制定し、それらにもとづいた運営を行う

 

2.農業の発展

新田開発:年貢の増収を見込んで幕府・諸藩が積極的に開発

・耕地面積の変化:江戸時代初めからの100年余りで約2倍に増加 

 

①農具の発達 

備中鍬:深耕用。刃先が3~4本に分かれている

千歯扱:脱穀用

唐箕:選別用。中国から伝来。風を起こして籾殻をとり除く

千石簁:選別用。金網の上に穀類を流し、粒の大きさで選別

踏車:灌漑用の小型揚水車

 

②農村の変質

ⅰ.商品作物

・四木・三草

・特産物:出羽村山(最上)地方の紅花駿河・山城宇治など

 

ⅱ.肥料の普及

刈敷…山野から刈り取る草

下肥:人口の多い都市周辺部で使用

 

金肥…購入して使用する肥料。特に商品作物が盛んな地域に普及

 干鰯…金肥の1つ。鰯を日干しにしたもの。房総がおもな漁獲地(養殖ではない)

 油粕…金肥の1つ。菜種から油を絞り取った残り

 

ⅲ.農書:農業技術の解説書。江戸時代に普及

『清良記』…17世紀前半、最初の農書とされる

農業全書宮崎安貞の著。最初の本格的な農書

農具便利論大蔵永常の著。数十種類の農具を図示し、用法を記す

広益国産考大蔵永常の著。作物の栽培法・商品作物加工による農家の利益や国益を論じた

 

3.漁業

上総九十九里浜鰯漁干鰯などにも加工され、金肥として流通

蝦夷地昆布俵物の生産

 ※俵物:さまざまな海産物を俵に詰めたもの

 →17世紀末以降、にかわって長崎貿易における清への主要輸出品目に

 

4.陸上交通

五街道

・江戸の日本橋を起点とする5つの街道。道中奉行が管理

東海道中山道、甲州道中、日光道中、奥州道中

 

②脇街道(脇往還)

・五街道以外の主要幹線道路

 

③伝馬役

・街道周辺の村々が提供した、人や馬などの負担のこと

 ※助郷役…人馬不足の際に補助人足を差し出す村(助郷)の負担

 

④通信:飛脚制度

継飛脚…幕府公用。書状・荷物の伝達

大名飛脚…諸大名が設置。江戸~国元の連絡用

町飛脚…三都の商人が開始(民間の営業)。飛脚問屋が運営

 

5.水上交通

①海上交通

ⅰ.南海路

・太平洋側の江戸~大坂間

菱垣廻船樽廻船が木綿・油・酒などを輸送

 →樽廻船が優位

 

ⅱ.河村瑞賢による海運の整備(17世紀後半)

東廻り海運:東北地方 ~ 江戸 の航路

西廻り海運:江戸・大坂 ~ 東北の日本海側 の航路

 

②河川舟運

角倉了以が高瀬川、富士川などを開削・整備

 

6.貨幣

①金貨

計数貨幣

・単位:両・分・朱4進法

・おもに東日本で流通

 

②銀貨

秤量貨幣

・おもに西日本で流通

 

③銭貨

計数貨幣

・1636年発行の寛永通宝が広く流通

 

藩札

・17世紀後半以降、各藩・旗本領内で流通した紙幣

・藩財政の窮乏を救う

 

7.三都の発展

①江戸

・日本最大の消費都市:人口100万で世界一

・市場:神田の青物市場(野菜・果実)、日本橋の魚市場

 

②大坂

・商業経済の中心地。「天下の台所」

蔵屋敷…諸藩・旗本が年貢米や特産物(蔵物)販売のために設置した倉庫兼取引所

 

納屋物…蔵物に対する語。民間商人の手を経て大坂に集まる商品

・市場:堂島の米市場、天満の青物市場、雑喉場の魚市場

 

③京都

・幕府機構:京都所司代が朝廷・公家・寺社との関係維持、畿内周辺を支配

 

8.商業

①豪商

初期豪商…17世紀前半。権力者と結んだ特権的商人。朱印船貿易で栄える 

 ex)京都の角倉了以茶屋四郎次郎

 

元禄豪商…17世紀後半。三都の繁栄を背景に出現。両替商も兼ねる 

 ex)大坂の鴻池家、江戸の三井家三井高利が祖)

 

②問屋仲間の連合体

・江戸:十組問屋

・大坂:二十四組問屋 


漢字の読み方(タップで開きます) 1.江戸時代の村、町
・村方三役:むらかたさんやく
名主:なぬし
組頭:くみがしら
百姓代:ひゃくしょうだい
・庄屋:しょうや
・肝煎:きもいり
・村法(村掟):そんぽう(むらおきて)
・村八分:むらはちぶ
本百姓:ほんびゃくしょう
・水呑百姓:みずのみびゃくしょう
本途物成:ほんとものなり
・四公六民:しこうろくみん
小物成:こものなり
伝馬役:てんまやく
助郷役:すけごうやく
田畑永代売買の禁止令:でんぱたえいたいばいばいのきんしれい
田畑勝手作の禁:でんぱたかってづくりのきん
:ちょう
町人:ちょうにん
・家持:いえもち
・町年寄:ちょうどしより
・月行事:がちぎょうじ
・町法(町掟):ちょうほう(ちょうおきて)

2.農業の発展
備中鍬:びっちゅうぐわ
千歯扱:せんばこき
唐箕:とうみ
・千石簁:せんごくどおし
・踏車:ふみぐるま
・四木・三草:しぼくさんそう
・紅花:べにばな
刈敷:かりしき
下肥:しもごえ
金肥:きんぴ
干鰯:ほしか
・油粕:あぶらかす
・清良記:せいりょうき
宮崎安貞:みやざきやすさだ
農具便利論:のうぐべんりろん
大蔵永常:おおくらながつね
広益国産考:こうえきこくさんこう

3.漁業
俵物:たわらもの

4.陸上交通
・脇街道(脇往還):わきかいどう(わきおうかん)
継飛脚:つぎびきゃく

5.水上交通
菱垣廻船:ひがきかいせん
樽廻船:たるかいせん
河村瑞賢:かわむらずいけん
角倉了以:すみのくらりょうい

6.貨幣
・秤量貨幣:しょうりょうかへい
・寛永通宝:かんえいつうほう
藩札:はんさつ

7.三都の発展
・天満:てんま
・雑喉場:ざこば
十組問屋:とくみといや
二十四組問屋:にじゅうしくみといや