Ⅲ.室町時代の流れ・続き
4)外交、近隣諸国の動き
①元との貿易 ※私貿易。国交なし
ⅰ.建長寺船
・1325年、鎌倉幕府(当時の執権は北条高時)が派遣
・目的:建長寺修造の費用を得るため
ⅱ.天龍寺船
・1342年、足利尊氏が夢窓疎石のすすめにより派遣
・目的:後醍醐天皇の冥福を祈るための天龍寺建立の費用を得るため
②明との貿易
ⅰ.日明貿易の開始
・1401年、足利義満が明に使者を派遣
※正使:僧祖阿、副使:博多商人肥富
・朝貢形式:足利義満が明の皇帝から日本国王と認められたうえで貿易
ⅱ.勘合貿易の開始:1404年~
・勘合:明から交付され、倭寇と正式な貿易船を区別するために使用
※倭寇:海賊集団
・輸出品:銅、硫黄など
・輸入品:銅銭、生糸など
ⅲ.貿易の中断と再開
・4代将軍足利義持が中止:朝貢形式を嫌う
・6代将軍足利義教が再開:貿易の利益を重視
ⅳ.日明貿易(勘合貿易)の変化
・15世紀後半以降、貿易の実権が有力守護に移る
→細川氏:堺商人と結んだ
大内氏:博多商人と結んだ
・1523年、寧波の乱:細川氏と大内氏の戦い
→勝利した大内氏が貿易を独占
※その大内氏も16世紀半ばに滅亡し、日明貿易は断絶
③朝鮮の建国と日朝貿易
ⅰ.朝鮮の建国
・1392年、李成桂が高麗を倒して建国
・日本に倭寇の禁止と通交を求め、足利義満がこれに応じる
ⅱ.日朝貿易
・朝鮮は三浦(富山浦、乃而浦、塩浦)の3港を開港して日本と貿易
・倭館…三浦と首都の漢城に設置。日本の使節の接待と貿易に使用された
・輸出品:銅・硫黄、蘇木・香木など
・輸入品:木綿を中心とする織物類、大蔵経など
ⅲ.争乱
・1419年、応永の外寇…朝鮮軍が対馬を倭寇の本拠地とみなして襲撃
→貿易が一時中断
・1510年、三浦の乱
…三浦に住む日本人が、特権の縮小に不満を持ち暴動を起こす
→以後、日朝貿易は衰退
④琉球の統一
・三山の対抗:北山・中山・南山の3勢力が争う
※それぞれ明に朝貢
・1429年、中山王の尚巴志が三山を統一。琉球王国を建国
→中継貿易で栄える:明、日本、朝鮮、東南アジア諸国と貿易
⑤蝦夷ヶ島(現在の北海道南部)
・和人が進出し、交易を開始
・アイヌ…古くから北海道に住む人々。漁労・狩猟、交易などで生活
・道南十二館:12あった和人の城館。アイヌとの交易や領域支配の拠点とした
・1457年、大首長コシャマインの蜂起:不利な交易・圧迫に不満
→蠣崎氏が鎮圧
5)室町幕府の動揺:15世紀
①4代将軍足利義持の時代(在職:1394~1423年)
・日明貿易(勘合貿易)の一時中断
・1416年、上杉禅秀の乱…前関東管領上杉禅秀の反乱。幕府が鎮圧
②土一揆の発生
ⅰ.1428年、正長の徳政一揆(正長の土一揆)
・近江の馬借が徳政(借金の帳消し)を求めて蜂起
・京都近郊の農民たちも京都の土倉や酒屋を襲った
※襲われた理由:土倉・酒屋は高利貸しを営んでいたため
・私徳政の展開:借金の一方的な踏み倒し
ⅱ.1429年、播磨の土一揆
・播磨の「土民」が蜂起
・守護(赤松満祐)が鎮圧
③6代将軍足利義教の時代(在職:1429~1441)
ⅰ.1438年、永享の乱
・鎌倉公方足利持氏と関東管領上杉憲実の対立
→足利義教は上杉氏を支援し、足利持氏を討伐
ⅱ.1440年、結城合戦
・結城氏朝が足利持氏の遺児を担いで挙兵
→鎮圧される
ⅲ.1441年、嘉吉の変
・有力守護赤松満祐が将軍足利義教を暗殺
→幕府の権威が大きく動揺。幕府の実権が有力守護に移る
ⅳ.1441年、嘉吉の徳政一揆
・6代将軍足利義教の死後、京都で発生
・「代始めの徳政」を要求
→室町幕府は初めて徳政令を発令。一揆は終息
④8代将軍足利義政の時代(在職:1449~1473年)
ⅰ.1454年、享徳の乱
・鎌倉公方足利成氏が上杉憲忠を殺害
→鎌倉公方の分裂
古河公方:足利成氏が鎌倉から下総の古河に移る
堀越公方:足利政知が鎌倉に入れず伊豆の堀越に留まる
※関東管領(上杉氏)も分裂
・山内上杉家:のち、長尾景虎に関東管領職を譲る(→上杉謙信)
・扇谷上杉家:のち、北条氏康に滅ぼされる
ⅱ.1467年、応仁の乱
a.発端
・8代将軍足利義政とその妻日野富子の間に男子なし
・義政は弟の足利義視を還俗させ後継ぎとした
・日野富子が足利義尚を出産
→守護大名を巻き込んだ争いが発生
b.守護大名の対立
・東軍総大将:細川勝元
・西軍総大将:山名持豊(宗全)
・斯波氏、畠山氏も一族内で対立
※応仁の乱は1477年に一応終結するが戦乱は全国へ広がる
→戦国時代へ
漢字の読み方
・建長寺船:けんちょじせん
・天龍寺船:てんりゅうじせん
・夢窓疎石:むそうそせき
・冥福:めいふく
・祖阿:そあ
・肥富:こいつみ
・倭寇:わこう
・生糸:きいと
・足利義持:あしかがよしもち
・足利義教:あしかがよしのり
・寧波の乱:ニンポーのらん
・李成桂:りせいけい
・三浦(富山浦、乃而浦、塩浦):さんぽ(ふざんほ、ないじほ、えんぽ)
・倭館:わかん
・漢城:かんじょう
・蘇木・香木:そぼく・こうぼく
・大蔵経:だいぞうきょう
・応永の外寇:おうえいのがいこう
・三浦の乱:さんぽのらん
・三山:さんざん
・北山・中山・南山:ほくざん・ちゅうざん・なんざん
・尚巴志:しょうはし
・琉球王国:りゅうきゅうおうこく
・中継貿易:なかつぎぼうえき
・蝦夷ヶ島:えぞがしま
・和人:わじん
・道南十二館:どうなんじゅうにたて
・大首長:だいしゅちょう
・蜂起:ほうき
・蠣崎氏:かきざきし
・上杉禅秀:うえすぎぜんしゅう
・正長の徳政一揆:しょうちょうのとくせいいっき
・土一揆:つちいっき
・馬借:ばしゃく
・私徳政:しとくせい
・播磨の土一揆:はりまのつちいっき
・永享の乱:えいきょうのらん
・足利持氏:あしかがもちうじ
・上杉憲実:うえすぎのりざね
・結城合戦:ゆうきかっせん
・結城氏朝:ゆうきうじとも
・遺児:いじ
・嘉吉の変:かきつのへん
・赤松満祐:あかまつみつすけ
・足利義政:あしかがよしまさ
・享徳の乱:きょうとくのらん
・足利成氏:あしかがしげうじ
・上杉憲忠:うえすぎのりただ
・古河公方:こがくぼう
・下総:しもうさ
・堀越公方:ほりごえくぼう
・足利政知:あしかがまさとも
・山内上杉家:やまのうちうえすぎけ
・長尾景虎:ながおかげとら
・上杉謙信:うえすぎけんしん
・扇谷上杉家:おうぎがやつうえすぎけ
・応仁の乱:おうにんのらん
・日野富子:ひのとみこ
・足利義視:あしかがよしみ
・還俗:げんぞく
・足利義尚:あしかがよしひさ
・細川勝元:ほそかわかつもと
・山名持豊(宗全) :やまなもちとよ(そうぜん)