殖産興業、文明開化

I.殖産興業

・富国強兵(の富国=経済発展)を目的に行われた、近代産業育成のための政策

 ※強兵は徴兵令による

お雇い外国人の指導を受けて政府主導で近代産業を育成

 

1.関係官庁

工部省:1870年設置

・初代工部卿伊藤博文

 

内務省:1873年設置

・初代内務卿大久保利通


2.鉄道

・技術・資金はイギリスが提供

・1872年、新橋横浜間開通

・1874年、神戸~大阪~京都間開通

・1889年、東海道線全線開通(東京~神戸)


3.通信制度①:郵便制度

※それまでの飛脚にかわる通信手段

・1871年、前島密の建議により発足

・1873年、全国均一料金制を採用

・1877年、万国郵便連合条約に加盟


4.通信制度②:電信・電話

・1869年、東京~横浜間に最初の電信線を架設

・1871年、長崎~上海間が開通。これにより欧米にも接続

・1874年、北海道~東京~長崎まで

・1877年、電話を輸入

 ※官営の電話事業開始は1890年


5.海運

三菱(郵便汽船三菱会社)を政府が保護

 ※土佐藩出身の岩崎弥太郎が経営


6.生糸

・輸出の中心産業として生産拡大へ

官営模範工場として富岡製糸場(群馬県)を建設

 ※フランスの技術を導入し、工女を育成


7.第1回内国勧業博覧会:1877年

西南戦争中上野で開催


8.農業

・西洋式技術の導入

駒場農学校の開設

三田育種場の開設


9.北方の開発

※1869年、蝦夷地北海道と改称し、役所として開拓使を設置

※開拓次官(のち長官):黒田清隆

 

屯田兵制度:1874年

士族授産の1つ

・開拓と防備にあたらせる

 

札幌農学校開校:1876年

・アメリカ人クラークを招く

アメリカ式の大農場制度と畜産技術を移入

 

③開拓使を廃止:1882年

函館・札幌・根室の3県を設置

 

北海道庁を設置1886年

・3県を廃止

 

⑤アイヌ政策

ⅰ.北海道旧土人保護法:1899年

・アイヌの日本人同化政策が進む

 

ⅱ.アイヌ文化振興法:1997年

・北海道旧土人保護法を廃止


10.貨幣・金融制度

太政官札民部省札

※不換紙幣戊辰戦争の戦費調達のため

・京都の三井・小野組、大坂の鴻池などの商人から300万両の御用金を徴発

 

新貨条例:1871年

・円・銭・厘の十進法を採用

 江戸時代は両・朱・分の四進法

金本位制を建前とするが実際は金銀複本位制

 

国立銀行条例:1872年

ⅰ.概要

渋沢栄一が建議

兌換銀行券を発行するために民間の力を活用

アメリカナショナルバンクの制度にならう

 ※国法に基づく私営の民間銀行 

 

ⅱ.第一国立銀行

三井・小野組の出資で東京に設立

 

ⅲ.その後の動き

・設立条件が厳しく、はじめ4行しか設立されず

・1876年、国立銀行条例を改正

兌換義務を廃止、不換銀行券の発行を可能に

⇒1879年の第百五十三国立銀行まで設立


11.政商の登場

政府から特権を与えられ、金融・貿易・海運などの分野で独占的な利益をあげた特権的資本家

例:三井三菱(岩崎弥太郎)五代友厚


II.文明開化

・都市部を中心に生活様式が近代化し、新しい思想なども登場

・政府主導で近代化を進めた

 

1.啓蒙思想

天賦人権の思想

・人は生まれながらに人間としての権利がある(自然権)という考え

自由民権運動の指導理論につながる

 

②おもな思想家

ⅰ.福沢諭吉

『西洋事情』『学問のすゝめ』『文明論之概略』など

 

ⅱ.中村正直

『西国立志編』:スマイルズの『自助論』の翻訳

『自由之理』:ミルの『自由論』の翻訳

 

ⅲ.中江兆民

・『民約訳解』ルソーの『社会契約論』の一部を漢訳

 

明六社:1873年設立

・社長:森有礼

・参加者:福沢諭吉西周加藤弘之西村茂樹らの洋学者

『明六雑誌』を発行

 

④活版印刷術の発達

・本木昌造鉛製活字の量産に成功

⇒日刊新聞や雑誌の刊行が相次ぎ、報道や政治評論などの言論活動が活発化


2.教育制度の整備

文部省の設置:1871年

・教育関係を担当する省

 

学制公布:1872年

フランスにならった近代的学校制度

・国民皆学。初等教育・実学に重点

・全国を8大学区に分け、各大学区に大学校1、中学校32、小学校210を設置

 ※実情に合致しない教育制度

⇒1879年、教育令(アメリカにならった制度)

 

東京大学設立:1877年

・旧幕府の開成所医学所を起源とする諸校を統合

・多くの外国人教師を招く

 

④師範学校

・教師養成のための学校

 

⑤女子教育

女学校女子師範学校などを設置

 

⑥私立学校

慶応義塾福沢諭吉が創設

同志社新島襄が創設

東京専門学校大隈重信が創設


3.宗教

①神道の国教化、国民教化

ⅰ.神仏分離令1868年

・祭政一致の立場から神仏習合を禁止し、神道を国教に

廃仏毀釈がおこる:寺院・仏像などの破壊

 

ⅱ.大教宣布の詔:1870年

・神道国教化の推進を表明

 

ⅲ.祝祭日の制定

紀元節:2月11日

天長節:11月3日

 

キリスト教

・1868年、五榜の掲示で禁止

浦上教徒弾圧事件などで列強の抗議を受け1873年に高札を撤廃

※キリスト教を黙認へ


4.生活の変化

太陽暦の採用:1872年

太陰太陽暦を改め、西洋諸国にならう

・1日を24時間、日曜を休日とする

 

②洋風風俗の奨励

洋服の着用

ざんぎり頭断髪令による

洋風建築:銀座通りの煉瓦造の建物など

 

③その他

牛鍋ガス灯人力車鉄道馬車などの普及

※都市部中心の変化。農村部は従来とあまり変わらず