公民3-10 地方自治2 解説

1.直接請求権

地方公共団体の住民の権利に、直接請求権があります。直接請求権とは、有権者の署名を一定数以上集めることで、さまざまな請求ができるというものです。ここでは4つの直接請求権を確認しておきます。

 

条例の制定・改廃の請求

条例の制定あるいは改正・廃止を請求することができます。必要な署名は有権者の50分の1以上で、署名の提出先は首長です。請求がなされると、首長は議会を招集し、その結果を報告する義務があります。

 

②監査請求

必要な署名は有権者の50分の1以上、署名の提出先は監査委員です。請求後、監査委員は監査を実施し、その結果を公表します。

 

③議会の解散請求

④議員・首長の解職請求(リコール)

③・④は同じ手続きとなります。必要な署名は有権者の3分の1以上で、提出先は選挙管理委員会です。請求がなされたら、住民投票を行い、過半数の賛成があれば解散または解職となります。

 

※必要な署名数の覚え方のコツ

必要な署名数が、①②は50分の1、③④は3分の1と、ずいぶんと違いますね。考え方としては、③④は議員や首長が解散・解職によって仕事を辞めさせることになるわけです。つまり、議員・首長の職業選択の自由を制限することになってしまいます。そのため、手続きには慎重さが求められるので、より多くの署名が必要となり、さらに住民投票まで行って過半数の賛成がなければ、解散・解職はできないということになっています。

 

このテーマでは、計算問題にも注意しましょう。必要な署名数の分母となるのは、その地方公共団体の人口ではなく、有権者です。有権者の人数をもとに計算しなければ不正解となってしまいます。


2.地方財政

地方公共団体が行う経済活動のことを、地方財政といいます。地方公共団体の収入(歳入)のうちわけとして登場する、いくつかの項目を知っておきましょう。

 

地方税

これは、その地方の住民が納める税のことで、自主財源に分類されます。この税は、それぞれの地方公共団体が自由に徴収して使うことができます。すべての地方公共団体で見た場合、歳入の約40%を占めています。

 

地方債

地方公共団体の歳入不足を補う借金のことです。当然のことながら、この金額が多い地方公共団体は、財政が苦しくなります。

 

地方交付税交付金

これは国からの補助金で、使い道は自由です。多くの地方公共団体は、きびしい財政状況におかれています。特に、都市部と地方では税収入の地域間格差が見られます。そのような格差を是正するためにも、この補助金が必要となっています。

 

国庫支出金

これは、義務教育や道路整備など特定の仕事のために国から支給されます。使い道は国によって指定されています。


3.地方自治に関するその他の用語

市町村合併

複数の市町村が1つにまとまることです。合併を行う目的・理由は、地方公共団体の仕事の効率化や、財政の安定化・財政難の解消のためです。

 

住民投票

市町村合併や産業廃棄物処理場の建設など、その地域住民にも深くかかわるような重要な問題については、住民の賛成・反対の意思を確かめるために行われることがあります。ただし、住民投票の結果に法的拘束力はありません

 

オンブズパーソン制度(オンブズマン制度)

市民の代表者であるオンブズパーソン(オンブズマン)が住民からの苦情を受け付け、行政の監視や改善要求をする制度です。世界ではスウェーデンで始まり、日本では川崎市が最初に導入し、全国に広がっています。

地方公共団体では導入されていますが、日本では国としてはこの制度は導入されていません。

 

NPO(非営利組織)

利益を目的とせず、地域の課題などに取り組む団体です。


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●3-1 民主主義、政党政治
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●3-2 選挙
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●3-3 国会1
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●3-4 国会2
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●3-5 内閣
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●3-6 裁判所
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●3-7 司法権の独立と裁判員制度
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●3-8 三権分立
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●3-9 地方自治1
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●3-10 地方自治2
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